仙台家庭裁判所 昭和33年(家)68号 審判 1958年2月05日
申立人 笠井ヒサ子(仮名)
相手方 中野昌夫(仮名)
事件本人 中野里子(仮名)
主文
事件本人中野里子の親権者を相手方昌夫より申立人笠井ヒサ子に変更する。
理由
申立人は主文同旨の審判を求め、その申立の実情として、申立人と相手方は昭和二十六年七月十一日協議離婚をし、その際、事件本人の親権者を相手方と定めた。しかし離婚以来事件本人は寸時も申立人と離れることなく同居し申立人の監護に服している。一方相手方からは離婚後全然音信もなく、その行方も不明で現在に至つている。このたび事件本人が学令に達したので申立人が親権者となつて申立人の戸籍に入れたいと思い、本申立をした次第であると述べた。
当裁判所は、申立人本人を審問し、家庭裁判所調査官千葉昭五に、相手方の所在その他について調査を命じた。
右審問及調査の結果と申立人及相手方の戸籍謄本の記載を綜合すれば、申立人が本件申立の実情として述べる前記事実はこれを認めるに充分である。
ただ問題は、現に親権者である相手方が所在不明である本件の如き場合において、親権者変更の申立を許し得るかどうかであるが、事件本人の福祉のためには、その親権者として相手方より申立人の方が、ふさわしい事情が明らかになつている以上たとへ、現に親権者である相手方が所在不明の状況にあつても親権者の変更を許容することが相当であるといわなければならない。
よつて、本件申立は之を認容すべきものと認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 市村光一)